「そうはいうけど、特例なんていくらでも作れるわ。王女に戻った私と、王太子になったクライド兄様。空席になったファンドーリナ公爵を任命するお父様が加われば、できないことなんてあるかしら」
「……ないですね。しかし、このようなことをして誰が得をするというのですか?」
「勿論、お父様に決まっているわ。クライド兄様にわざわざフェリクスを失脚させるように命じたのだから」
「何故、とお聞きしても?」
「いいわよ。でも、その理由はヘイゼルが一番よく知っているのではなくて?」

 ケイティ王女に言われて、私は目を逸らした。

 傲慢で権力欲の強い兄。好きな人と細やかに暮らしたい私とは正反対で、常に荒波に向かう人だった。

 そんな態度を取っていれば、自然と周りは敵だらけになるのに、それが分からないらしい。

 さらに私と兄は、ファンドーリナ公爵家の特徴である金髪に紫色の瞳を持つ者同士。誰がどう見ても兄妹にしか見えない。しかしそれが良くなかった。

 正妻の子とメイドの子が同じであってはならないのだ。そう、扱いまでも。
 だから兄は私が義母に虐げられているのを、敢えて見に来ていた。ただ優越感を得るために。