時を遡ること、一年前。
クライド殿下の二十歳の誕生日パーティーに招かれた時のことである。私もちょうど十八歳となり、社交界デビューの年だった。
その頃はまだ、お互い婚約者ではなく、私は候補の一人にすぎなかった。だから、というわけではないけれど、それなりに私も恋する乙女だったのだ。
そう、私には好きな方がいた。名をデニス・ヴェルター伯爵令息。それも嫡男ではなく、三男だった。
仮に私がファンドーリナ公爵家の一人娘だったら、婿養子に迎い入れることができたことだろう。
けれど残念なことに、私には年の離れた兄がいた。すでにファンドーリナ公爵の地位に就いていたため、どうあがいても無理な話であり、さらに私のファンドーリナ公爵家での立ち位置が弱いことも重なって、それは夢のまた夢だった。
「はぁ~」
思わずため息が出た。目の前のテーブルに置かれているカップに映る、何もできない自分に嫌気がさして。すると……。
チリン。
どこからか、綺麗な音色が聞こえて顔を上げる。その途端、呼び鈴を持ったクライド殿下と目が合った。
クライド殿下の二十歳の誕生日パーティーに招かれた時のことである。私もちょうど十八歳となり、社交界デビューの年だった。
その頃はまだ、お互い婚約者ではなく、私は候補の一人にすぎなかった。だから、というわけではないけれど、それなりに私も恋する乙女だったのだ。
そう、私には好きな方がいた。名をデニス・ヴェルター伯爵令息。それも嫡男ではなく、三男だった。
仮に私がファンドーリナ公爵家の一人娘だったら、婿養子に迎い入れることができたことだろう。
けれど残念なことに、私には年の離れた兄がいた。すでにファンドーリナ公爵の地位に就いていたため、どうあがいても無理な話であり、さらに私のファンドーリナ公爵家での立ち位置が弱いことも重なって、それは夢のまた夢だった。
「はぁ~」
思わずため息が出た。目の前のテーブルに置かれているカップに映る、何もできない自分に嫌気がさして。すると……。
チリン。
どこからか、綺麗な音色が聞こえて顔を上げる。その途端、呼び鈴を持ったクライド殿下と目が合った。