そういった事情から、私とデニス様は今、クライド殿下の計らいで王妃様、つまりクライド殿下の御母上のご実家である、アングラード侯爵家のお世話になっていた。

 このまま本当にアングラード侯爵家の養女になってもいいと思えるくらい、ここは居心地が良い。それは偏にデニス様が傍にいてくれるからだろう。

「本当にデニス様がいてくださって、私も心強いです」

 実はアングラード侯爵家に来てすぐに、デニス様から名前呼びを強要されたのだ。自分ばかりが名前で呼ぶのは悪いからと。

 ふふふっ。ふふふふふっ。もう、この時の喜びといったら、ふふふっ。
 それを言うデニス様も勿論、可愛らしかったのだけれど。嬉しさで顔がニヤけそうだった。

 表向きは「そんなそんな」と謙遜(けんそん)を装っていないと、はしたなすぎて……多分、目も当てられなかったと思う。
 今でも声に出していると顔が……ふふふっ。