けれど当のクライド殿下の目標は、何においてもミランダ嬢と結ばれること。
 そのために私と婚約をして、スキャンダルまで起こし、ご自分の名声を地に落としたのだ。そう、一介の王太子が平民と結ばれるためだけに起こした騒動……。

 現在、手続き中というのも、私との婚約解消だけではない。ご自分の処分も、である。だからお互いの立場を考えると、こんな風に明るく話をしている状況ではなかった。
 しかし、そのあっけらかんとしている姿は、見ていて清々しい。本当に後悔していないことが伝わってくるほどだった。だからだろうか。ちょっと皮肉を言いたくなった。

「それにしても、あれだけの騒動を起こしたというのに幸せそうですね、クライド殿下……目標であった平民にはなれませんでしたのに」
「……だけど僕の本気は父上にも、ミランダにも伝わったから構わないさ」
「王太子の戯言、もしくは一時の感情だと思っている者は、未だにおりますよ?」

 ミランダ嬢に(たぶら)かされた、という者も少なからずいる。