「果たしてどうだろうか、公爵。考えればすぐに分かることだと思うが、夫人が持っているその扇。見た目が美しいのに、少し痛んでいるように見える。しかし新調したようにも見えなくはない。これは……」
「まるで何かを叩いたかのようですね」
デニス様の言葉に、今度は私の方が蒼白になった。
義母の美しい赤い扇。茶色の毛は地味だが、猫目のようにつり上がった緑色の瞳の下にその扇を持ってくると、妖艶に見えてさらに美しさを増すのだ。
そう、恐ろしいほどに美しく、残酷な眼差しが私を襲う。今はクライド殿下に、いや、デニス様に向けられているが、二人ともどこ行く風だった。
「大丈夫ですか? ベリンダ嬢。先ほども夫人に叱責されていましたが。まさかあの扇で叩かれたのではありませんか?」
「えっ、いや、その……」
そうです、と言いたいのに、鋭い緑と紫色の視線が刺さって言えなかった。代わりに、デニス様の裾を申し訳程度に掴む。
すると、クライド殿下に肩を掴まれて、デニス様の後ろに押し込まれてしまった。
「まるで何かを叩いたかのようですね」
デニス様の言葉に、今度は私の方が蒼白になった。
義母の美しい赤い扇。茶色の毛は地味だが、猫目のようにつり上がった緑色の瞳の下にその扇を持ってくると、妖艶に見えてさらに美しさを増すのだ。
そう、恐ろしいほどに美しく、残酷な眼差しが私を襲う。今はクライド殿下に、いや、デニス様に向けられているが、二人ともどこ行く風だった。
「大丈夫ですか? ベリンダ嬢。先ほども夫人に叱責されていましたが。まさかあの扇で叩かれたのではありませんか?」
「えっ、いや、その……」
そうです、と言いたいのに、鋭い緑と紫色の視線が刺さって言えなかった。代わりに、デニス様の裾を申し訳程度に掴む。
すると、クライド殿下に肩を掴まれて、デニス様の後ろに押し込まれてしまった。