「ですが、俺は……いえ、私は護衛なので」
「確かにヴェルター卿はここにお仕事で来ていらっしゃいます。けれどこれからもずっと傍にいてもらうのですから、できれば仲良くした方が、ヴェルター卿も楽なのではありませんか?」

 キャー! ドサクサに紛れて「ずっと」って言ってしまった!
 デニス様は気づかれたかしら。

 チラッと様子を伺うが、柔らかな表情をされただけで、手応えを一切感じない。
 それもそうだ。今の私はクライド殿下の婚約者。デニス様はそのために来てくれたのだから、そもそも私の想いに気づくわけがない。むしろ、逆効果になってしまうのではないだろうか。

 思わず、何も非がないクライド殿下に毒ついた。だが、次の瞬間、意図も簡単に手のひらを返す。

「そうですね。私もヘイゼル嬢にお尋ねしたいことがありましたから。しかしそれとこれとは違いますので、失礼させていただきます」

 デニス様に断られてしまったが、私の心は一喜一憂する。元々、デニス様とは接点が少ないというのに、質問とはなんだろうか。もしかして、さっき失礼なことをした話?
 それでも身分は私の方が高いため、尋ねなくてはならなかった。