笑う機械人形。
 心がない機械人形。
 皆には私がそう見えているのか。

 私はただ雰囲気を壊さないようにしたいだけ、嫌な雰囲気になるのが嫌なだけなのに。

 婚約破棄を言われてから、お母様は頻繁に舞踏会に行けと言ってくる。私はお母様の機嫌を損ねないように毎回の舞踏会に参加していた。
 
 本当は行きたくない。
 
 だって私が婚約破棄したことは舞踏会の人間全員が知っているわけだから。舞踏会では誰も私に話しかけてこない。愛想笑いのカトリーナと話をしても笑うばかりでつまらないのだ。私は自分が惨めったらしくなりバルコニーに移動した。

 夜風が私の頬を優しく撫でる。
 その風の優しさに、私は片方の目だけに涙が流れた。

「お前も泣くときがあるんだな」

 薄暗いバルコニーのせいで、先客がいたことがわからなかった。この声はどこか聞き覚えがある。

「すみません。お見苦しいところをお見せして」

「たしかに見苦しいな」

 私は失礼な人だと思った。
 笑ってやり過ごしてここから離れよう。
 そう怒る話ではない。

「また笑って誤魔化そうとしてるのか?」

 男性は広間の証明があたる場所まで歩いてくる。
 私はその人物に驚いた。

「ダミアン王子!」