「ねぇ悠真。晴、どこか具合悪いのかな?」

 悠真は明日の昼食用のミネストローネを煮込んでいる。彼から貰ったお土産のプリンを頬張る沙羅はキッチンに立つ悠真の背中に問いかけた。

『晴? 別に何ともないと思うよ』
「そっかなぁ。夕食の時に全然喋らなかったんだよ。いつもよりも元気がない気もするの」
『……ああ、なるほど』

悠真は何か思い当たったようで調味料片手にこちらを向いた。

『あいつなら大丈夫だから気にしないでいいよ。晴だってたまには大人しい日もあるさ』
「うん……。それはそうなんだけど……」

 キッチンカウンターの隅でプリンをつつく沙羅の心は今一つ晴れない。晴の不調の原因に悠真は心当たりがあるように見えたのに、それを話す気はないらしい。

全部話して欲しいとは言わないけれど……。

『……沙羅。晴の部屋に腕時計忘れたかもしれない』
「腕時計?」
『悪いんだけど晴の部屋に行って俺の腕時計ないか聞いてくれるかな。俺はこれの様子見ないとだから、ここを動けないし。ね?』

ミネストローネの鍋を指差した悠真と沙羅の視線が交わった。