母が飛行機事故で天に昇ってから沙羅の家族は父ひとりだけだった。父が出張で留守の時はいつもひとりぼっちだった。

ひとりで過ごす夜には慣れたつもりだった。けれどやっぱりひとりは淋しい。悲しい。

「私達……家族、なんだよね……?」

 沙羅は四人の顔を代わる代わる見ていく。今日初めて会った人を家族と呼ぶのはとても奇妙なことかもしれない。
だけどこの四人が“家族”になってくれると思うと嬉しくなった。

『沙羅ちゃんが俺達を家族と思ってくれるなら俺達は沙羅ちゃんの家族だよ』

悠真の言葉と他の三人の優しい顔。涙が溢れそうになるのを堪えて沙羅は四人に笑顔を向けた。

「……うん。悠真、星夜、晴、海斗、これから家族としてよろしくね」

 ずっと家族が欲しかった。もうひとりぼっちは嫌だった。
母親を失った穴は大きくて、ぽっかり空いた心の穴を埋めてくれる存在はどこにもなかった。

 ──“彼らは沙羅の家族だよ”──
父の言葉の意味が少しだけわかった。彼らは父が沙羅にプレゼントしてくれた“家族”なんだ。

 不安と期待が入り交じる四人組との新しい生活。
四人とひとりのクインテットはどんな音色を奏でるのかな?