美形の怒りのオーラは恐ろしい。

(怒らせると一番怖いのって悠真さんなのかも……)

さすがに軽率だと感じた星夜は肩をすくめ、まぁまぁと手振りで悠真をなだめる。

『ごめんって。怒るなよー。そのくらいのペナルティなら沙羅ちゃんも敬語使わなくなるかと思ったんだ』
『そんな風に無理やり強いるやり方は良くない。沙羅ちゃんが困るだけだ。でも……沙羅ちゃん、星夜だけじゃなく俺達全員に敬語使わなくていいからね。皆呼び捨てで呼んでくれて構わないよ』

 星夜をたしなめた時とは真逆の穏やかで優しい顔を悠真に向けられた沙羅はまたゆでダコのように顔を赤くした。

イケメンが微笑む時は予告してください、お願いしますと切に思う。この生活は心臓に悪い。

『じゃーさー、いっそのこと沙羅ちゃんのことも呼び捨てで呼ぶのは? 俺達は家族みたいなものなんだろ?』

 いつの間に集合していたのか、晴と海斗もカウンターの向こうから顔を覗かせて話に参加していた。

『そうだよな。家族にちゃん付けしないよな』
『俺は最初から、こんなうるさい女呼び捨てにするつもりだったけど』

星夜が同意し、海斗は沙羅を名指しして悪態をつく。今は海斗の憎まれ口は聞かなかったことにしよう。

『沙羅ちゃんはどう? 俺達も君のことを呼び捨てで呼んでもいいかな?』

四人を代表する形で悠真が沙羅に尋ねた。