沙羅の自宅は音楽家の行成と沙羅のために二階(二十階)に完全防音の音楽室がある。
十二畳程度の広さの部屋には沙羅のグランドピアノと昔はギタリストだった行成愛用のギターが置かれている。

しかし今日はそれだけではない。いつの間に運び込まれたのか、大きなドラムセットとマイクスタンドが音楽室の一角に設置されていた。

ドラムセットの中央に座るのは晴、ギターとベースを構える悠真と星夜、マイクスタンドの前でスタンバイをしているのは高園海斗。

(あの無愛想失礼男が本当にUN-SWAYEDのKAITOなの?)

 半信半疑の沙羅は客席のソファーに行成と共に座った。

沙羅の着席を確認した悠真が晴に目配せすると晴は頷き、ステッキをドラムの縁に当ててリズムを刻んだ。そのリズムが合図となって悠真がギターを鳴らす。

そこに星夜のベースと晴のドラムが加わり、印象的なイントロで彼らの世界が開幕した。

(このイントロは“resurrection”……?)

それまで目を閉じていた海斗が目を開けた。
沙羅と目が合った海斗は口元を斜めにして不敵に微笑む。覚悟しろよ? と言われているような挑発的な微笑みに不覚にも心臓が騒がしくなった。

 一拍置いて海斗が歌い出す。彼の声を聞いた瞬間にゾクッと全身が身震いした。その後に現れたのは沸き上がる高揚感。体が熱い。

彼らが披露してくれたのはミリオンヒットとなったファーストアルバム〈Resurrection〉に収録された同名タイトルの〈resurrection〉。

曲がラストのサビに入り、激しさを増したドラムとギターが最後の余韻を奏でる。曲が終わっても沙羅はしばらく何も考えられなかった。

演奏を終えた彼らに拍手を送る礼儀も忘れて、沙羅は彼らが作り上げた世界の余韻に浸っていた。