『とりあえず俺達の自己紹介しない? いつまでも正体不明の奴らじゃ沙羅ちゃんも嫌だろ』

 リビングに漂う若干の気まずさを打ち消すように、黒髪短髪の男の陽気な声が響いた。

『そうだな。じゃ、晴から座ってる順に行け』

茶髪の男の同意を得て、陽気な男は挙手をする。

『はーい。沙羅ちゃん、俺は緒方晴。天気予報の晴れの字で“晴《はる》”ね。よろしく』

 黒髪短髪の男の名前は緒方晴。名前通り晴れの日の青空や太陽が似合う男だ。沙羅はよろしくお願いしますと言って会釈した。

『次は俺ね。さっき自己紹介したけど改めて、結城星夜。フランスの血が入ってるクォーターだよ』

 晴の隣にいるのは玄関先で遭遇した結城星夜。瞳の色や顔立ちが日本人離れしていると感じたのはフランスとのクォーターだったからだ。

『おーい。海斗の番』
『……高園海斗』

 星夜にせかされて不貞腐れた様子で名乗った高園海斗。相変わらず目付きも態度も悪い。

「見た目はいいのに……」
『なんか言ったか?』
「イイエー。ナンデモアリマセンー」

海斗とはいいコンビどころか犬猿の仲になりそうだ。沙羅は作り笑いをして、フランボワーズのケーキを咀嚼した。