父に上手く言いくるめられた気がしないでもないが、四人との同居を渋々承諾した沙羅は行成と共にリビングに戻った。

『葉山さん、沙羅ちゃん。先ほどは海斗が失礼な物言いをして申し訳ありません』

沙羅達がリビングに入るとすぐさま、四人の中で最も落ち着いた雰囲気を放つ茶髪の男が沙羅と行成に頭を下げた。

『ははっ。気にしなくていいよ悠真くん。沙羅と海斗くんはいいコンビになりそうだねぇ』

 メンバーのひとりが吐いた沙羅への暴言も行成はさして気にしていない様子だ。何がいいコンビになるのか、沙羅は恨めしげに行成を睨みつつソファーに腰かけた。

『ほら。お前も沙羅ちゃんに謝れ。ここに住まわせてもらうんだから礼儀はきちんとしろ』
『……悪かった』

 茶髪の男に促された例の目付きの悪い男が謝罪の言葉をポツリと呟く。到底、人に謝る態度ではないがいつまでも文句を言うのも子どもっぽい。

「まぁ謝ってくれたなら……いいです」

沙羅は男と目を合わせずにパティスリーKIKUCHIのフランボワーズのムースケーキを口に運んだ。こんな異常事態は甘い物を食べなければやっていられない。