行成が慌てふためいてリビングを出ていき、残されたのは無言の四人組と冷めかけのコーヒー、皿に載ったまま手がつけられていない六人分のケーキ。
緒方晴は自分の分のケーキにフォークを入れた。

『あーあ。沙羅ちゃん怒らせちゃった。海斗のせいだぞ』
『うるせぇ』
『海斗はさー、あんなにイヤイヤ言われてショックだったんだよなぁ。素直じゃねぇなぁ』

星夜が呆れの眼差しで海斗を見ている。晴と星夜はそれぞれのケーキを口に運んだ。

『別にショックとかそんなんじゃねぇよ』

 不貞腐れる海斗はケーキには手を付けずに晴と星夜から顔をそらす。悠真は無言で閉じられたリビングの扉を見つめていた。

『悠真、さっきからだんまりだな。やっとお待ちかねのこの日が来たんだぞ』
『当然の反応だと思ってただけ。見ず知らずの男四人と同居しろなんて言われたら戸惑うのが普通だ』

 晴に尋ねられた悠真は澄ました表情を崩さずにコーヒーをすする。冷めたブラックコーヒーはとても苦かった。