ロフトのような簡素なものではなく、れっきとした個室が四部屋。普段は使われていないが、父の友人が泊まりに来た際に客間として使われていた。

「あの部屋をこの人達に?」
『そう。人数と部屋数ぴったりだしね』

にこにこと笑う父の笑顔に危うく騙されかけた。いくら部屋があっても問題はそこじゃない。

「嫌! 絶対にイ、ヤ! お父さん、私も一応女だよ? 兄弟でもない男の人と一緒に暮らすなんて無理!」
『大丈夫だよ。二階にはトイレもお風呂もある。皆には二階のお風呂を使ってもらえばいいんだからさ』
「そういう問題じゃなくて!」

風呂とトイレの問題も確かに大切だが、最も大切な問題を父に忘れられている気がして沙羅は叫んだ。

『はぁ。……うるせぇ』

 行成に抗議する沙羅を黙って見ていた四人組の方から不穏な呟きが聞こえた。沙羅は声がした方を見る。あの目付きの悪い男と目が合った。

『心配しなくてもお前みたいなうるさくてガキっぽい女、襲わねぇよ』

目付きの悪い男が言い捨てたセリフが沙羅の怒り指数を最高値にさせた。

「……お父さん。こんな口が悪い人と一緒に住むのは無理です。どうしてもこの人達を住まわせるなら、私がここを出ていきます。今までお世話になりました」
『えっ……おいっ沙羅っ!』

 行成の制止も聞かずにリビングを飛び出した沙羅は自室に向かった。