今年度の美術部の新入部員は比奈を含めて七名。途中入部の二年生がひとりと、他六人は一年生。
 三年生は部長の彩未を含めた女二人、男三人の五人、二年生は女四人、男四人の八人。一年生は女四人、男二人の六人。
 部員数は総勢、十九人となる。

『そろそろ夏休みの活動スケジュール出るんじゃないですか? 例の個展の日は八月って聞きましたよ』
「個展?」

 列の先頭を歩く二年生の男子生徒、織部《おりべ》望《のぞむ》の発言に比奈は首を傾げた。
 比奈の疑問に答えてくれたのは彩未だ。

「鈴木先生の美大時代の恩師が毎年夏に開いている個展だよ。年代を問わず恩師の同じゼミを卒業した元ゼミ生達が自身の作品を持ち寄ってギャラリーに展示するの。開催が夏休みだから、いつも美術部の皆で個展を観に行くんだ」
「ズッキーニ先生の作品も観られるんですかぁっ?」

 横から話に加わったのは、二年生の黒川《くろかわ》萌映《もえ》。漫画同好会から途中入部で今年度に美術部入りした彼女は、二年生でありながらも部活では比奈と同じ新入部員である。
 萌映には織部が返答を返した。

『去年の個展にズッキーニの作品あったから、今年も新作が展示されるんじゃない? 先生こんちは~』
『おう』

 放課後の美術室ではすでに顧問の鈴木教諭が待ち構えていた。続々と集まる部員達と笑顔で会話を交わす鈴木を比奈は教室の片隅で眺めるだけ。