「ズッキーニ先生、今日も寝癖凄いもんねっ。鳥の巣みたい」
「ズッキーニのカール頭とモジャモジャアポロン……やばっ、ツボる」
『ズッキーニどんまいっ!』
『お前らなぁ……。だからこれは寝癖じゃなくて天然パーマ! あと俺は別にいいけど、他の人に対しては容姿をからかって遊ぶなよ?』
「はーい」

 鈴木の毛量の多い天然パーマはまとまりがなく、時たま寝癖がついていると生徒達にからかわれる。
 容姿のからかいはそれが本人にとってデリケートな部分であればあるほど、無邪気な言葉が心に刺さって傷付いてしまう。鈴木は常にその危険性を生徒達に諭していた。

(先生が最後に床屋さんに行ったのいつだっけ。あの具合だと最近は行ってないんじゃない?)

 生徒が鈴木の髪の件を気軽に口にできるのも彼が自身の外見に無頓着なためだ。教職の立場ゆえに口周りや顎の髭はきちんと剃っているが、彼が散髪をサボった時期は本当に頭に鳥が住めそうな状態になる。

(頭がボサボサでも絵を描いてる時の真剣な顔は超絶かっこいいんだけどね)

 比奈は鈴木をズッキーニだなんて呼ばない。皆と同じ呼び方は嫌だった。
 比奈にとって鈴木はいじられキャラの美術教師ではないから……。