視界が闇に沈んだところで、とても安心できる状況じゃない。

 翔悟は零司に手を引かれるが、目を開けてそれを振りほどいた。


「いっ、行くつもりか?」

「当たり前だろ、俺はこの目で見たいんだよ」


 零司は声が聞こえてきた方向を見て、焦っている様子だ。


「早くしないといなくなっちゃうだろ! 俺、行ってくるからな!」

「あ、おい!」


 零司は走り出してしまった。

 しかも翔悟の元を去る前に、丸谷月乃のノートを翔悟に押しつけていったのだ。


 どうせ会いに行くなら自分で返せ、翔悟は心の中で毒づきながらも、自分の足が震えているのに気がついた。

 ──どうしよう。

 一人は怖いけれど、零司の元に行くのは考えられない。

 ノートを返すなんて、そもそも無理だったんだ。

 まよなかさんが丸谷だとしても、幽霊に会いに行くなんて絶対に嫌だ。

 零司を置いて帰ってしまおうか。


 翔悟の中で結論が出ようかというその時だった。


「うああああああぁっ!」


 どこからか、零司の叫び声が(とどろ)いた。