夜の旧校舎は、薄気味悪かった。
翔悟と零司はそれぞれ持ってきた懐中電灯の明かりだけを頼りに、暗い廊下を進んでいく。
旧校舎に着いた時、どこも鍵がかけられていて翔悟は安心したのだが、零司が抜け道を知っていたからこうして中に入る羽目になってしまった。
どこを見ても埃が薄く降り積もっているが、床はそうでもなさそうだ。
きっと肝試しに来た連中のせいだろう。
「それにしても、いないな」
零司がぼそりと呟いた。
「じゃあもう帰ろう。まよなかさんなんていない、それでいいだろ」
「いや、やっぱ丸谷なら自分の教室にいるんじゃないか? 一年二組に行こう」
零司の言葉に翔悟が肩を落としたその瞬間だった。
ずる、ずる。
ずる、ずる。
がたん。
「ま、よ、なか……ちょうだい……」
なにかを引きずるような音の後で、か細くどこか不気味な声が聞こえた。
翔悟は思わず、目をつぶって、口をつぐむ。
そんな翔悟とは対照的に、零司は声を弾ませる。
「まよなかさんだ!」