そんなわけないだろ、翔悟はそう言ってやりたかった。

 悲惨な事故で命を落としたクラスメートを、幽霊だとか言って面白がるなんてよくないことだ。


 けれど、まよなかさんがいるらしいのは小学校の旧校舎で、そこは確かに丸谷月乃が生前に過ごしていた場所だ。

 それから、まよなかさんはまよなかを欲しがっている。丸谷月乃のなぞなぞと同じだ。

 それらは、まよなかさんが丸谷月乃だという零司の説をより現実的にする証拠のようなものだった。


「だから、まよなかさんのところに確かめに行く。翔悟も行こうぜ」

「はぁ?」

「まよなかさんをこの目で見るんだ」

「零司、いいかげんにしとけよ。俺は行かないからな」

「ビビってるんだろ。お前、昔からそうだもんな」


 図星だ。

 けれどすぐにそれを認めるのは悔しいし、理由は一つだけじゃない。


「丸谷がかわいそうだから言ってる」

「かわいそうって言うならなおさらだ。このノート、丸谷に返してやらなくていいのかよ」

「そんなの、零司が自分で返せよ」

「俺は返したくない。まよなかさんのノートだぞ? そんなレアなもん手放したくないだろ。けどお前が一緒に来てくれるんなら、返してやってもいい」

「なんなんだよ、それ……」

「俺一人で行ってまよなかさんを見たって言ってもみんな信じてくれないだろ。だからお前が証人になってくれればいいんだ」


 零司の言うことはめちゃくちゃなようで、よく考えれば筋が通っている──ようにも思えなくもない。

 翔悟は絶対に行きたくなんてなかったが、うまい反論が思いつかなかった。


「一回だけ、一瞬だけでいいんだ。うまく写真でも撮れたら最高だけどな」


 そうして半ば強引に言いくるめられた翔悟は、零司と共に小学校の旧校舎に向かうことにしたのだった。