「……それ、昔、事故の時に拾ったってこと?」

「そうだよ」

「どうかしてる」


 いよいよ零司は普通じゃない。

 翔悟は鞄を持って立ち去ろうとしたが、零司に腕を掴まれて引き留められてしまった。


「待てって。見ろよこれ」


 零司は、ノートを開いて中のページを見せてきた。

 そこには、丸谷が書いたと思われる『なぞなぞ』の文字がある。


「あいつ、こういうの好きだったよな」


 確かに丸谷はなぞなぞが好きだった。

 よく自作の問題をクラスメートに解かせていたのを覚えている。


「それがどうしたんだよ」


 零司が指さしたのは、丸谷が考えたのであろうなぞなぞの文章だった。


『① わたしのにがてなもの はや○○』

『ヒント かく上』


 翔悟が答えを考え始めた頃に、零司は自分の指を移動させる。


「あ、悪い、こっちだった」


『② わたしのほしいもの ○』

『ヒント ま夜中』


 ところどころが漢字だったりひらがなだったりするのはきっと、小学一年生だった丸谷月乃には書けない漢字もあったからだろう。

 それにしても、この問題はまるで──。


「ほしいもの、真夜中……?」

「『まよなか、ちょうだい』──まよなかさんは、真夜中を欲しがってる。まよなかさんの正体は、丸谷月乃なんだよ」