丸谷月乃は、翔悟と零司の同級生だった。

 けれど彼女は、もう死んでいる。

 小学一年生の頃に、痛ましい事故で死んだのだ。


 それを思えば、零司の言った『現場』の意味が嫌でもわかる。

 丸谷月乃が死んだ時、零司は現場を見たと言っていた。

 下校中に車にはねられて、丸谷月乃の小さな体は宙に舞い、近くの工事現場に落下した。

 即死だったらしい。

 けれどその頃に、事故を目撃した零司が言ったことを翔悟ははっきりと覚えている。


『丸谷に、鉄筋がいっぱい突き刺さってた』


 丸谷が落ちたのは、むき出しになった鉄筋の上だったそうだ。

 想像するだけで、恐ろしいし、悲しい気持ちにもなる。

 それなのに零司はそんな様子もなく、まるで面白いものでも見たかのように丸谷の事故現場の様子を語っていたのだ。

 その頃から、翔悟は零司のことが苦手だった。

 そして、それは今でも変わっていない。