「まよなかさんの正体、俺、わかっちゃった」


 放課後に、翔悟の幼なじみである零司(れいじ)がそんなことを言い出した。

 おとなしい翔悟に比べて、零司はにぎやかでやんちゃなタイプだ。

 翔悟は、話も気も合わない零司のことを幼なじみというより腐れ縁に近いと思っていた。


「へえ、正体ってなんなの」


 翔悟は帰り支度をしながら一応(たず)ねたが、正直興味はなかった。

 むしろ、幽霊の話題なんてやめてほしいとさえ思っている。


「じゃーん」


 零司はそう言って、翔悟の机の上に一冊のノートを置いた。

 表紙には花の写真と『こくご』の文字、それと(つたな)い字で記名がされている。


『丸谷 月乃』


 その名前を、翔悟は知っていた。

 零司に顔を向けると、零司はどこか自慢気な表情だった。


「実は当時、現場(・・)で拾っといたんだ。記念に」


 ──関わりたくない。

 身の毛のよだつ思いだ。

 翔悟は零司のことが信じられなかった。