「まよなかさんって、知ってる?」
「小学校の旧校舎に、出るんだって」
「まよなか、ちょうだい──って」
そんな噂がはじめに出たのは、もう数年も前のことだった。
中学生になった今でも、周りは未だにその噂を覚えている。
休み時間、近くの席で女子たちが話すのを、翔悟は正直やめてくれと願いながら聞いていた。
自分は怖がりだという自覚があった。
中学生にもなって、ましてや男なのに怖がりだなんて恥ずかしい。
けれど怖いものは怖いのだ。
たとえば、夜にひとりぼっちの部屋にいて、どこからともなくパキッと音が聞こえることとか。
風や温度や湿度によって木造の家が膨張や収縮をしたことによる音だというのは、頭ではわかっている。
それでも怖いから、目をつぶる。
闇に沈めば怖くない。
見ようとするから怖いのだ。