「ありがと」 「ま、よ、なか、ありがとう」 丸谷月乃の面影を感じるのが不思議なくらい、まよなかさんは人のかたちをしていなかった。 けれど、どこか嬉しそうに微笑んでいて。 それはやっぱり、丸谷月乃の笑顔に似ていた。 「ま、よ、なか」 「ちょうだい」 「もっと」 「まよなか、ちょうだい?」 一瞬の間にまよなかさんを脳裏に焼きつけて──翔悟の視界は、すぐにまた闇に沈んだ。 《おしまい》