拝啓 愛する君へ


 君への愛が日に日に重たくなっていくのが、
 手に取るように分かります。

 少しずつ、少しずつ……。
 風船のように軽かったキラキラとしたこの想いは
 いつしか、鉛のように重くくすんでいきました。

 君への想いを逃がすかのように書き綴った手紙は、
 机の引き出しに収まりきらなくなって燃やしました。

 これは、君に宛てて書く最初で最後の手紙です。

 いきなりこんな手紙を貰ったら、
 君はどんな表情をするのか、
 それをこの目で見られないことを
 すごく残念に思います。


 私はあなたのことが1番大好きで、1番大嫌いでした。

 君の笑うとクシャクシャになる笑顔が好きでした。
 けれどそれは、私にだけ見せる笑顔ではなかった。

 君の心地よいその声が好きでした。
 けれどそれは、私の名前だけを呼ぶものではなかった。

 君がぎゅっと抱きしめてくれるのが好きでした。
 でも、私だけの特権ではなかった。

 ずっと傍にいたのは私なのに、
 気づいたら君は他の人を好きになってた。

 私の好意なんて気づいてくれなくて。
 そんな君の鈍感で、誰にでも優しい君が
 憎らしい程大嫌いでした。

 嘘です。
 君の全てを誰よりも愛してます。

 愛しているからこそ、
 私はこの想いを背負い続けられなかった。

 きっとこの想いは私を押し潰して、
 殺してしまうでしょう。

 でも、後悔はしてません。
 君を想って死ねるなら、
 これ以上にないほど幸せなんです。

 最後に、君の幸せな未来を心から願ってます。



 君を愛するものから





 その日、1人の少女が行方不明になった。

 部屋には一通の手紙と、

 何かに押し潰されたかのような血塗れになった制服が発見されたという。