朝。

目が覚めてリビングに向かうと、トーストの焼ける香りが鼻腔を擽る。

私の気配に気付いたママは、料理の手を止めた。
 


「……あら、衣舞。おはよ~」



新聞から顔を出したパパも、こちらに笑顔を向けてくる。

 

「おはよう衣舞。今日もかわいいなぁ!」



机に並ぶのはカリカリのベーコンと目玉焼きの乗ったトースト、人参とバナナのスムージー。

どれも私の大好物だ。



「おはよう、ママ、パパ」



私は、宇崎衣舞(うざきいぶ)。中学3年生。

目に映る美味しそうな朝ごはんと優しい両親は、幸せを絵に描いたみたいな光景だ。

実際私は、かなりの幸せ者だと思う。

だって、毎日の生活に何の不満もないし。


 
「え~、かわいいって……衣舞だけ?」

「そりゃあママの方が可愛いに決まってるだろう」

「やだぁ♡」



……ちょっと両親の行き過ぎたラブラブはどうにかしてほしいけど。

そんなに楽しいものなのかね、恋愛って。

私にはよくんかんないや。