私はパパに勧められて受けた高校に無事合格した。
今日は入学式だ。
ギリギリで変更したのでなんだか気持ちが追い付かなかったけれど……制服可愛くて、テンション上がる!
クリームベージュ色のブレザーに、同じ色でタータンチェックのスカート。
それから黄色のリボンが珍しくて、とても気に入っている。
髪型は今日もゆる巻きのハーフツイン。
またぶりっことか言われるかもしれないけれど、気にしない気にしない!
「いってきまーす」
リビングにいるママに向かって大きい声で言うと、勢いよく玄関の扉を開いた。
すると──
ギランッ!
外の空気に触れた瞬間に、通行人の男性が目を光らせてこちらを見た。
「なんか甘い匂いがするな……」
ぽそりと呟いた男性に、私はハッとする。
……やばい!チョーカー忘れてた!
慌てて家の中へ戻ると、ドキドキと速くなった心臓を抑えた。
はぁー……危なかった。
自分がバニィの末裔だと知ってからもう結構な日が経ったというのに、私はいまだに自覚が足りていない。
だって魅了の力なんて、目にも見えないし、無味無臭だし。
うっかり忘れてしまうんだよね。
私は玄関のフックに掛けてあるチョーカーを手に取る。
後ろでちょうちょ結びをして装着する仕様の、黒いチョーカー。
真ん中にシルバーのハートモチーフが付いていて、めちゃくちゃ可愛い。
一見ただのチョーカーだけど、これはバニィである私には欠かせないアイテムなんだ。