「とりあえず、やれることはやろう」
「やれること?」
「もうすぐ高校受験の出願受付がはじまるよな?」
唐突に出てきた現実味のある話しに戸惑いつつも、私は頷く。
「え、うん」
「もう志望校は決めているかもしれないが……変えてほしい」
「え?」
「行ってほしい学校がある」
行ってほしい学校って……運命の人と、何か関係があるの?
「そこなら”ナイト”がいるから……衣舞を安心して通わせられる」
「ナイト……?」
また知らない単語が出てきて、頭の上にハテナが浮かぶ。
「いいわね!ナイトなら……衣舞の運命の人になるかもしれないし!」
それまで無言を貫いていたママが、少し弾んだような声を上げた。
「ナイトってなに……?」
……どうやら、まだまだ私の知らない話しがたくさんありそうだ。
カーテンの隙間から見える窓には、ゆっくりと落ちてくる雪がぶつかっている。