病気がちだった母が亡くなり居ないはずの父親に引き取られ、平民から急に貴族になり貴族学校に通い出し困っていたマリアンナをそれとなく助けていた。貴族の父親とも上手く行かず、マリアンナは悩んでいた。放っておけなかったことは仕方ない。

 そこに嫉妬したエレオノーラに虐められて、庇うしかないレイモンには婚約者が居るという状況にも関わらず、二人は葛藤しながらも恋に落ちてしまった。

 ……そして、今夜いよいよレイモンは私へと別れ……婚約破棄を告げ、二人は本格的に恋を始めるはず。

 私は貴族学校卒業式会場へと入り、断罪される覚悟を決めて、婚約破棄いつでもどんと来いという気持ちでいっぱいだった。

 こういうことは、早め早めに済ませて置きたい。嫌なことこそ、最初に片付けておく。

「……あら? レイモンが居ないわね?」

 公爵令嬢の身分に相応しい豪華なピンク色のドレスを身に纏った私は、かろうじてまだ婚約者の姿を探しきょろきょろと周囲を見回した。

 私は取り巻きらしい貴族令嬢たちの誘いも断り、たった一人で甘い果実水を飲んでいた。この異世界でも、未成年は飲酒が禁止。