むしろ、前世陰キャオタクだった私には罰でもなんでもなく、のんびり出来るってご褒美でしかない。

「ええ。どのような盛大な結婚式になるでしょうか……エレオノーラ様が国で一番美しい花嫁になられることを、私もとても楽しみですわ」

 ……ええ。レイモンには今夜婚約破棄されるんだけど、多大な期待を裏切ってしまって、本当にごめんなさいね。

 王太子の妃となる令嬢に仕えていることが本当に嬉しいのか、にこにこと微笑んだメイドを見て、私は何も言えず曖昧な表情で頷いた。


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 王太子レイモンは現在私の婚約者だけど、主人公マリアンナと恋仲であるはずだ。

 それもこれも、エレオノーラが嫉妬の気持ちに駆られてマリアンナ様を虐めてしまったから、惹かれあってはいけないと自制していた彼らの仲は、だからこそというか燃え上がり深まり、完全に自滅した。

 少女漫画の中の、わかりやすい悪役令嬢。

 それは私のこと……自分のことだけど、自業自得過ぎて、なんだか可哀想。

 けど、レイモン殿下に関しては、素敵な人だと思う。金色の髪に青い瞳に甘い顔立ちの美形で、性格も良い。絵に描いたような王子様。