これは、身体だけの記憶? ……それとも、私が本当に記憶喪失なのかもしれない。

 だって、物語開始にもし私が転生出来たならって、さっき思ったもの。そう思った通りになっていて、だからこそ……私は。

「そうか……まあ、記憶がなかったのなら仕方ない。君が来なくて心配で、いらいらして態度が悪くすまなかった……そんな理由だとは思わなかったから」

「私……今夜、レイモンに婚約破棄されると思っていたの」

 これは、本当! さっきまで、レイモンに婚約破棄されないとって、彼を探していたのに……それが全部勘違いだってわかって、本当に嬉しくて。

「……婚約破棄を? 貴族女性にとっては、致命的とも言える不名誉を背負う事になる。僕は余程のことでもないと、そんなことをする訳がないよ」

「そっ……そうよね」

 それを聞いた私は、なんだか居たたまれない気持ちになった。

 漫画の中のエレオノーラは、その余程のことをしちゃったんだよね……けど、婚約破棄されたから田舎追放くらいの罪で済んだのかもしれない。