……あれ? この人、もうすぐ私に婚約破棄する王子様だよね?

 きょとんとした私と真顔のレイモンは、しばし見つめ合った。

 二人とも、相手の動向を窺っている。何、この時間……良くわからない。

 田舎追放希望の私としては、彼にこの場で婚約破棄して貰っても良いんだけど……とりあえずは、レイモンが何かを言うのを待っていた。

 ……そもそも、私は今朝までエレオノーラではなかったし、もしかしたら私以外に転生者が居て、その影響ですべてが変わってしまったのかもしれない。

 可能性だけを考えれば、なくもないと思う。私も転生してるし……。

 え? ……え? 何。どういうこと?

「僕は婚約者の君が、ここで待ち合わせして一緒に卒業式に行こうと言うから、ここで待っていたんだが……君は何をしていた?」

 レイモンは、怒っているようだ。私と待ち合わせ? 卒業式が始まって、一時間は経っていて……その間、ずっと彼はここで待っていたってこと!?

 思いもよらぬことを言われて、私が大きな衝撃を受けていると、レイモンはどんどん近付いて来たので、慌てて両手を前に出した。