「ほら、タイマー切れちゃうからちゃんと入って!」
明日香に声をかけられて、スマートフォンに視線を送る。その瞬間、スマートフォンがパシャリと音を立てて僕たちを撮影した。
ふたりで自撮りするなんて初めてだった。背景には高瀬が教えてくれた彼岸花が一面に写っている。
それを眺めていると、まるで赤い海が凪いでいるみたいだ。
「それにしても、目の前で電車が行っちゃうなんて思わなかったね。本当にわたしたちついてないよね」
「いや、それで良かったんだよ。こうして公園に散歩してるんだから」
そうだね、と相づちを打つ明日香はとてもうれしそうだ。
「ある意味、リコさんに感謝だね!」
高瀬リコは不思議な子だった。
いつもクラスで静かに過ごしていたから、少し興味を持った。ちょっと話してみるととても素直で、明るい笑顔を見せてくれるんだ。
それが、素直な優等生だったのに、少し短いスカートをはいて、反抗の気配を見せてしまっただけなんだ。最初は驚いたけれど、それが高瀬が持つ行動力なんだと思う。彼女が、気づいていないだけで。
こんなにいびつな子は出会ったことがなかった。気にすれば気にするほど興味をもってしまう。でも、いざ彼女の心に触れると分かるんだ。
誰よりも真っ直ぐな心は、誰かが受け止めてあげないとすぐに曲がってしまう。
ああ、いつまでも元気でいてほしい。
「ねえ、これからどこに行きたい?」
そんな明日香の問いに、僕はひとつの回答を示すんだ。
「またいつか、リコに会いに行こうな」
(おわり)
明日香に声をかけられて、スマートフォンに視線を送る。その瞬間、スマートフォンがパシャリと音を立てて僕たちを撮影した。
ふたりで自撮りするなんて初めてだった。背景には高瀬が教えてくれた彼岸花が一面に写っている。
それを眺めていると、まるで赤い海が凪いでいるみたいだ。
「それにしても、目の前で電車が行っちゃうなんて思わなかったね。本当にわたしたちついてないよね」
「いや、それで良かったんだよ。こうして公園に散歩してるんだから」
そうだね、と相づちを打つ明日香はとてもうれしそうだ。
「ある意味、リコさんに感謝だね!」
高瀬リコは不思議な子だった。
いつもクラスで静かに過ごしていたから、少し興味を持った。ちょっと話してみるととても素直で、明るい笑顔を見せてくれるんだ。
それが、素直な優等生だったのに、少し短いスカートをはいて、反抗の気配を見せてしまっただけなんだ。最初は驚いたけれど、それが高瀬が持つ行動力なんだと思う。彼女が、気づいていないだけで。
こんなにいびつな子は出会ったことがなかった。気にすれば気にするほど興味をもってしまう。でも、いざ彼女の心に触れると分かるんだ。
誰よりも真っ直ぐな心は、誰かが受け止めてあげないとすぐに曲がってしまう。
ああ、いつまでも元気でいてほしい。
「ねえ、これからどこに行きたい?」
そんな明日香の問いに、僕はひとつの回答を示すんだ。
「またいつか、リコに会いに行こうな」
(おわり)