街角に赤い花が咲いている。
 天に向かって顔を上げて花弁を開いている姿は、太陽の光をたくさん浴びて輝かしく写真映えして見えるだろう。
 その姿を風が揺らすと、一気に雨が隠してしまった。
 お花に水をあげましょうね、お花も少しずつ水を飲んで美味しいからって。たしか小学校の先生がこんなことをいっていた。
 だけども、私の心は嬉しくなかった。いくらなんでも、溢れるくらい水をあげたらいくらなんでも草木だって枯れてしまうんだから。
 
 雨に濡れているのは可愛い花なんかじゃない、この私だった。
 空を見上げると、たくさんの雨粒が私に降りかかる。そのリズムは容赦がなく、私の顔も洋服もどんどん濡らしていく。
 赤いワンピースを着た私は、さながら雨に打たれる花のよう。
 それなのに、軒先に逃げる気にはなれなかった。
 
 私の瞳から流れる雫を、――涙を隠したかったから。
 
 小さい頃の私は、好奇心旺盛で何事にも楽しく取り組む性格だったと思う。
 だけども、自分ひとりが楽しんで、周りを汚してしまうなんて思いもしなくて。けっきょく、植木鉢の朝顔に水をあげすぎて、自分だけ花を咲かせることはできなかった。
 そんなことを思い出していたら、ついため息が出てしまう。
 人生というものは、ときに転機が訪れるものじゃないかと思っている。
 色んな子と出会ったり別れたりを繰り返して成長していく。そしてゆくゆくは人生のパートナーと巡り合うのだろう。
 私は高校生だ。
 結婚なんて、まだ程遠い人生。それでもたくさんの転機を繰り返してきた。自分自身の芽なんて発芽しないだろう、人生の意味も見つけらない日々だった。
 それが、たった一日で明るく輝くようになる。あの美しい花をこの目で見るなんて思いもしなかった。
 
 はじめて運命の赤い糸を実感したのに。
 今日は悪い転機の日。せっかくきみと出会ったのに、別れなきゃいけなくなってしまったんだ。
 なんで、みんなは人生が上手くいって幸せなのに、自分だけがこんなに不幸でかわいそうなんだろう。
 
 私たちの出会いは、別れるために。