「これ使い」

「ありがとうみっちゃん!神様だー!」


私の唯一の友達、みっちゃん。
同じクラスで私が超絶貧乏なのも知っている。


急いでアルバイトを探さないといけないから、ポケットWiFiを持ってきてくれた。



「甘えてごめんね」

「全然!私あんまり使ってないし使ってー」



だばーーー


「わぁ!なんで泣く!?しかも鼻水汚い!」


感激で号泣する私。



「それにしても大変だねー。急ぎでバイト探さなきゃだね」


「そうなの。ほんとに困った…って、ん!?」



ネットの求人情報の最新ページに、信じ難い内容が載っている。



【家事代行 時給3,000円】


神様っているんだ……


「これにする!!!!」

「ん?家事代行…家政婦的なやつ?時給良すぎじゃない?怪しくない?」


「怪しいなんて関係ない!!まずは受ける!!」


悩んでる暇なんてない。



「でもさ、年齢的に18歳以上だよ?」



ちーーーーーーーーーん



「いや、わかりやすくへこむなよ」


見てなかった……



「どうしよう。。もう見つからないよ…」

このままじゃ、お母さんも晴も守れない。




「伊織、うまくいく可能性は低いけど…」

「え?」



———————————————


次の日。

事情を話してアルバイトを18時に変えてもらい、家事代行の面接にやってきた。


みっちゃんのお姉さんに借りたスーツを着て、少しメイクもしてもらい、履歴書の年齢を18歳にして挑む面接。
(年齢確認されたら終わり)



「ここ…だよね?」

辿り着いたのは、超豪邸。


なんだ、この漫画とかで見るようなお屋敷は。



「みなみ…さん?」

皆実と表札に書いてある。



「阿部様でしょうか?」


大きな門の前であたふたしていると、お屋敷の中から黒いスーツを着た男性がやってきた。



「はっはい!」


「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」



大きな門が開き、中へと案内される。





いや…
門から玄関まで長ない!?



これ、ギリギリに出勤したらここで遅刻確定やん!!



緊張をごまかす為、心の中でひとり漫才を繰り広げる。





なんとか玄関に入る。


「わぁ…」

思わず声が出てしまった。


とても広いお屋敷の中。


もっとシャンデリアとかあるのかと思ったらそんな事はなく、今風なおしゃれな家だった。



「ようこそ、お越しくださいました」


お手伝いさん?のような方に会釈された。


「こっこちらこそ…」


訳わかんない返事をする私。



ん?
お手伝いさんいるのに、募集かけたの?


まぁ、こんなに広かったら何人もいるよね。




「お待たせいたしました。こちらのお部屋でございます」



ドキンドキンッ!!


緊張する!!
この中に雇い主さん…?がいるのかな!?


絶対受からなければ!!



私は18歳、私は18歳……
ぶつぶつ超小声で自分に言い聞かせる。




コンコンコンッ

「坊っちゃま、お待たせいたしました」



坊ちゃま?



そう言って、スーツの男性が扉を開ける。




「どうぞ」

私はスーツの人に促され中に入り、すぐに頭を下げて挨拶をした。




「阿部伊織18歳です!!宜しくお願いいたします!!」



そして、ゆっくり頭を上げた。