その日の夜、康二は家に帰り、一日の疲れを感じながらソファに腰を下ろしていた。駐車場での出来事が頭から離れず、ぼんやりと天井を見上げていた。真子に再会できるかもしれないという期待と、それを逃した失望感が入り混じっていた。その時、彼のスマートフォンが静かに振動した。画面を見ると、驚くべきことに、LINEの通知が入っていた。差出人の名前を確認すると、信じられないことにそれは「荻野真子」だった。
「えっ……真子?」
康二は目を疑った。何ヶ月も既読がつかず、連絡が途絶えていた真子から、突然メッセージが届いたのだ。震える手でメッセージを開くと、そこには短いが心に響く言葉が並んでいた。
「今日、病院で見かけたよ。久しぶりだね。少し話せる?」
康二の心臓は再び早鐘のように打ち始めた。まさか、こんなタイミングで彼女から連絡が来るなんて夢にも思わなかった。しばらくの間、驚きで何も言葉が出なかったが、次第に喜びが込み上げてきた。
「もちろん。久しぶりに会いたい。」
彼はすぐに返信を送った。信じられない出来事が起こり、康二は新たな希望と共に、その夜を迎えることになった。康二は、何度も真子にメッセージを送っていた。LINEのタイムラインで彼女の投稿を見つけるたびに、返信がないことを承知の上で、思いのままにメッセージを書き込んでいた。
「食事行きたいけど、一人じゃつまらないな」
彼は何気なくそう書き込み、返信を待つこともなく日々を過ごしていた。そんな中、真子から突然届いたメッセージには驚くばかりだった。メッセージにはこう書かれていた。
「返信いつも返さないけど、ちゃんと返してますよ。」
康二は意味が分からず、しばらくその言葉を考えた。返信が来ないはずのメッセージに対して、真子は一体どこでどう返していたのか?
「食事行きたいけど、一人じゃ」
ふと、彼はタイムラインで送った自分のメッセージを思い出した。そう、彼女はタイムラインを見ていたのだ。それも毎日。返事こそなかったが、真子は康二の言葉をずっと見続けていたのだ。康二は、その事実に気づくと、なぜか胸が温かくなるのを感じた。彼女は無言のまま、遠くから康二の言葉を受け止めていたのだ。そして今、初めてそのことを彼に教えてくれた。この不思議なつながりに、康二は少しの希望を見出した。次の日、康二はやはり返信が来ないことに少し落胆していた。「やっぱり期待しすぎたかな…」と自分に言い聞かせ、いつものように日常に戻ろうとした。しかし、その次の日、思いがけず真子からメッセージが届いた。
「昨日はバトミントンで遅くなって返せませんでした。ごめんなさい。」
その一言に、康二は驚きと同時に心が少し弾んだ。真子からの返信が遅れていたのは、忙しかったからだった。彼女が自分のことを気にかけてくれていると感じた瞬間、康二は何かが少しずつ変わり始めている気がした。
「バトミントンか、楽しそうだね。疲れてるなら無理しないで」と、康二はすぐに返事を送り、彼女の言葉を大事に胸にしまいながら、その日を過ごした。そして次の日、康二と真子はついに食事の約束を交わした。康二は少し緊張しつつも、やっと進展があったことに喜びを感じていた。しかし、その翌日、再び真子からのメッセージが届いた。
「友達がコロナが落ち着いてから行こうって言ってるの」
真子の友達が慎重な提案をしているのだろう。康二は一瞬残念に思ったが、今の状況を考えると仕方ないことだと納得した。彼も真子の安全を第一に考えていたので、「それがいいね、落ち着いたらまた日にち決めよう」と返信した。こうして、約束は先延ばしになったが、真子との関係が少しずつ進んでいることを康二は感じていた。コロナが落ち着く日を待ちながら、二人の時間が再び動き出すことを願っていた。