康二は真子との再会を心待ちにしていたものの、コロナ禍での混乱と仕事の忙しさに追われ、連絡を再び取ることを後回しにしてしまった。日常の中でふと彼女のことを思い出す瞬間はあったものの、そのたびに「今はまだタイミングじゃない」と自分に言い聞かせていた。しかし、心の奥底ではずっと燻っていた感情が消えることはなかった。真子との最後の会話、彼女の笑顔、そしてまだ解決できていない思い出が康二の中に静かに積もっていた。2021年の春、桜の花が咲き誇る頃、康二はある日、ふとポケットの中のバイクのアクセサリーに触れた。何度か手にしたことがあるその冷たい感触が、まるで彼に「もう一度動き出す時が来た」と囁いているかのようだった。康二は決心した。真子に再び連絡を取るべきだと。少しの迷いはあったが、彼は携帯を取り出し、真子の連絡先を開いた。指が自然とメッセージの画面を押していた。
「久しぶり。元気にしてる?また少し話がしたいんだ。」
送信ボタンを押すと、少しの緊張感が康二の心に広がった。彼は、またあのバイクの幻影が現れる前に、この気持ちに向き合う時が来たのだと感じていた。康二は勇気を振り絞って真子にメッセージを送った。しかし、期待とは裏腹に、何時間経っても既読がつかない。時間が過ぎるごとに、康二の胸には焦りと不安が膨らんでいく。彼女に何かあったのか、それともただ忙しいだけなのか。彼の頭の中で様々な思いが交錯する。それでも、既読がつかないまま数日が過ぎた。康二はその間、ふとした瞬間に携帯を確認してしまう自分に気付き、思いが募るばかりだった。バイクの幻影や、真子との思い出が次々と彼の心を支配し始め、彼はますます真子に対する未解決の感情と向き合う必要を感じるようになった。それでも、通知は鳴らず、康二は次第に「もしかしたら、もう自分に会いたくないのかもしれない」と不安な気持ちにさいなまれる。しかし、諦めきれない康二は、既読がつかないその画面を何度も見つめながら、自分の心に決着をつけるために次の一手を考え始めるのだった。康二は、真子からの返信を待ちながら、ふと思い出した。LINEには「タイムライン」という機能があることを。既読がつかない彼女のメッセージにモヤモヤしながら、真子の近況を知る手段として、彼はタイムラインを開いた。そこには、彼女の日常が断片的に投稿されていた。最近の投稿は、友人との食事や、景色の写真ばかりだったが、そこに真子の元気な姿が写っているのを見て、少しだけ安心した。彼女が大きな問題を抱えているわけではなさそうだということがわかったからだ。しかし、康二は不思議に思った。「なぜ返信がないのに、タイムラインには投稿しているんだろう?」真子がLINEを見ているのは間違いない。それなのに、自分のメッセージは無視されているかのように既読がつかない。この状況に康二はますます混乱した。タイムラインに投稿された真子の笑顔の写真を見つめながら、康二は思った。「これが、彼女なりの答えなのかもしれない」と。しかし、心の中ではまだ諦めきれず、次の動きをどうするべきか葛藤していた。真子のタイムラインは、彼女との距離を縮めるどころか、康二にさらなる迷いを与えるものだった。