『さぁさぁ、ともに最初の一歩を踏み出し――』
「その前に、アシュリンの旅に必要なものを用意しなくちゃね」
「今日は一緒に寝ような、アシュリン」
「エレノアも! エレノアも!」
「うんうん、みんな一緒に寝ようなぁ」

 本の言葉を無視して、グリシャがみんなの顔を見渡す。

 アシュリンはこくっとうなずいて、本を抱きしめた。

「それじゃあ、そうじは終わりにして、アシュリンの旅立ちに必要なものを準備しましょう!」

 ガタンと椅子から立ち上がったのはホイットニーだ。彼女の目はらんらんと輝いている。愛する娘が旅立つのだから、最高の準備をしなくては! とぎゅっとこぶしを握って力説している。

「ああ、それじゃあ、ちょっと待っていてください」

 次に椅子から立ち上がったのは、ケヴィンだった。リビングから出ていき、数分後に戻ってくる。その手にはリュックがあり、アシュリンは「あ!」と思い出したように声を上げた。

 以前、そのリュックをケヴィンが作っていたのを思い出し、彼女はそのとき彼が話していた『これはいつかアシュリンさんが使うんですよ』という言葉を思い浮かべてぱぁっと表情を明るくする。

 あのときは、それがいつなのかとても気になっていた。