「ラルフは失敗したことある?」
「しょっちゅうあるよ。家庭教師もいたんだけど、たぶん頭を悩ませていたんじゃないかなぁ」
「家庭教師!?」
「両親がいそがしいからね」
「あ、そっかぁ……」
歩いていたときの話を思い浮かべて、アシュリンは納得したように息を吐く。ラルフの両親はいそがしい人だったから、お手伝いさんと家庭教師がいてもおかしくない。おかしくはない――と思うのだけど、『家庭教師』がどんなものなのか想像できずにアシュリンはパンに手を伸ばした。祖母のトレッサが作ったパンは、やわらかくてほんのりと甘い。
「家庭教師から、どんなことを教わるの?」
「いろいろだよ。旅をするのは決めていたから、地図の読み方とか魔法の練習とか。あ、あと料理の仕方もちょこっと習ったかな」
「それは全部同じ人?」
「そうだよ。いろんなことを知っている人だった」
懐かしむように目元を細めるラルフに、アシュリンはリュックから牛乳とコップを取り出してカップに注ぎ、ラルフの前に置いた。もちろん自分の分も用意している。
「ラルフはその人たちのことが好きなのね。すごく優しい顔をしているわ」
「……え、そんな顔してた?」
ふにっと自分の頬に手を添えるラルフに、アシュリンは牛乳をコクコクと飲み干してから「してた!」と言い切った。
「しょっちゅうあるよ。家庭教師もいたんだけど、たぶん頭を悩ませていたんじゃないかなぁ」
「家庭教師!?」
「両親がいそがしいからね」
「あ、そっかぁ……」
歩いていたときの話を思い浮かべて、アシュリンは納得したように息を吐く。ラルフの両親はいそがしい人だったから、お手伝いさんと家庭教師がいてもおかしくない。おかしくはない――と思うのだけど、『家庭教師』がどんなものなのか想像できずにアシュリンはパンに手を伸ばした。祖母のトレッサが作ったパンは、やわらかくてほんのりと甘い。
「家庭教師から、どんなことを教わるの?」
「いろいろだよ。旅をするのは決めていたから、地図の読み方とか魔法の練習とか。あ、あと料理の仕方もちょこっと習ったかな」
「それは全部同じ人?」
「そうだよ。いろんなことを知っている人だった」
懐かしむように目元を細めるラルフに、アシュリンはリュックから牛乳とコップを取り出してカップに注ぎ、ラルフの前に置いた。もちろん自分の分も用意している。
「ラルフはその人たちのことが好きなのね。すごく優しい顔をしているわ」
「……え、そんな顔してた?」
ふにっと自分の頬に手を添えるラルフに、アシュリンは牛乳をコクコクと飲み干してから「してた!」と言い切った。