「失敗をしたら、『次はどうすればいいかな?』って考えるでしょ」

 こくりとアシュリンはうなずく。

「その方法が成功したら、うれしいでしょ?」

 ぶんぶんと(いきお)いよく首を縦に振るのを見て、ラルフはくすりと口角を上げた。

 両手の人差し指で宙に小さな四角を作り、言葉を続ける。

「この四角が、失敗だとしても、成功するまでどうしようか考えることって、大事だと思うんだよね」

 今度はその小さな四角を包み込むように、両手の人差し指で丸を作る。

「最初から上手にできる人はあんまりいないと思う。そういう人も、ある一定のレベルになれば壁にぶつかるだろうし……。そのときに、失敗した経験って活かせるんじゃないかな」
「失敗した経験が?」
「うん、だって成功ばかりの人生なんて、ないと思うんだ。だから、小さな失敗を繰り返すことで『ここはこうしたほうがいい』っていうのが、自分の中にできていくんだと思う」

 トン、と自分の胸元に手を置いて、目を伏せるラルフを見て、アシュリンは彼が言ったことを想像してみた。今まで失敗をしたことがない人が失敗したら、きっとパニックになっちゃうだろうな、と考えてじっとラルフを見つめた。