「ああ、おいしいね」
「でしょ! うちの畑でとれたんだよ」
「アシュリンも手伝っていたの?」
「ちょっとだけね」

 右手の人差し指と親指をほんの少し離してウインクをすると、ラルフがぷっと()き出した。

「水やりとか、もいだりとか?」
「そんな感じ! でも水の魔法は苦手だから、変なふうに水をまいちゃって……」

 昔話をラルフに話すと、彼は興味深そうにアシュリンの言葉に耳をかたむける。どうやらラルフは畑仕事をしたことがないらしい。

「変なふうって?」
「畑全体に、まんべんなくまかないといけないのに……一ヶ所にだけ集中しちゃったの」
「それは……怒られなかった?」
「笑われた」

 両親と一緒に魔法の練習でもあるから、と水の魔法と風の魔法を組み合わせて畑に水やりをしたのだが、あまりにも一ヶ所に水がまかれてしまい、父のグリシャがお腹を(かか)えて笑っていたのを思い出して、アシュリンは唇をとがらせた。

「水やりも魔法の練習かぁ。なんでも練習になるんだね」
「うちではずっとそうだったよ。小さなことからコツコツと、って」
「大事なことだね。小さなことから成功経験と失敗経験を積んでいくの」

 どういうこと? とアシュリンがラルフを見つめると、彼は再びにんじんに手を伸ばしてぽりぽりとかじる。

 食べ終わるのを待っていると、ごくんと飲み込んだラルフが口を開いた。