にこっと明るい笑みを浮かべるアシュリンに、ラルフは目を丸くした。彼女はそんなことを気にせず、ラルフとルプトゥムを自分のテントに招待し、中に入ってもらった。

「……広いねぇ」

 外観からは想像もできないくらい、彼女のテントの中は広かった。淡いピンク色の内装に、女の子だなぁとラルフは心の中でつぶやく。

「ちょっと待ってね」

 パチンと指を鳴らすと、テントの中に家具が現れた。

 テーブルや椅子はもちろん、ベッドまで出てきたのでラルフは感心したように息を吐き、それから肩をすくめる。

「すごいね、どういう仕組み?」
「わたしの魔力に合わせてもらったの。思い浮かべたものを取り出せる魔法なんだって! ……まぁ、このテントの中限定なんだけどね?」
「すごい魔法だなぁ」

 アシュリンが座るようにうながすと、ラルフはすとんと椅子に座った。

 しっかりとした椅子で、倒れる心配もない。背もたれに背を預けて、ラルフはそっとテーブルを撫でる。

「もしかして、家のテーブルや椅子?」
「うん! 想像しやすいからね。寝るときのベッドも、わたしが家で使っているものなんだ」
「……この魔法、誰が考えたんだろうね。便利すぎる……」
「えーと、おじいちゃんのお友だちが作ったって言ってたような……」

 祖父であるケヴィンの交友関係は広く、村までわざわざ訪れる人や手紙を送る人もいて、一度ケヴィンに『お友だちが多いんだね』と言ったことがある。そのとき、アシュリンの頭を撫でながら、『アシュリンさんにもお友だちがたくさんできますよ』と優しく微笑んでくれたのを思い出した。

「おじいさんも旅していたのかもね。そこで交友関係が広くなったのかも」
「それはあるかもね!」