歩いているうちに日が暮れ、今日はこの辺で休もうという話になり、街道(かいどう)から少し離れた場所で野宿の準備をする。

「えーっと、これをこうして……」

 リュックからテントを取り出して、組み立てていく。家族でキャンプをしたことを思い出し、「わたしも旅立つって知っていたから、キャンプが多かったのかな?」とノワールに問いかけた。

「そうかもしれないにゃ。近くの森でキャンプ、楽しかったにゃー!」
『良いですねぇ、ご家族でキャンプ!』

 年に数回、近くの森でキャンプをしていた。幼いエレノアは母と留守番をすることもあったけれど、兄のアンディがとても手際(てぎわ)よくテントを設営していたなぁ、とアシュリンは兄の姿を思い浮かべる。

(きっと三年前よりも背が伸びたんだろうなぁ。お兄ちゃん、今どこにいるんだろ?)

 アンディのことを考えながらテントを組み立てていると、ラルフが手伝いにきてくれた。彼はサクサクとアシュリンのテントを設営してくれた。

 その手際の良さに目を丸くしていると、「どうした?」と問われたのでそのまま口にする。

「ラルフはテントを張るのがうまいのね!」
「そう? ありがとう」

 ほめられたことに対して、ラルフははにかんだ。

 頬をかきながらちらりと辺りを見渡し、すっと自分のテントを指す。

「ぼくのテントはあっちだから、なにかあったら呼んで」
「うん! あ、ねえ、ごはんは一緒に食べよ!」
「そうだね」
「手伝ってもらったし、わたしのテントにご招待!」