「会話したい気持ち、かぁ」
「ラルフが旅に出て、きっとさびしいだろうしね。でも、お互いなにを話せばいいのかわからないみたいな感じなのかも?」
「それはあるかも。……そうだね、今度会ったら、ちょっといろいろ話してみるよ」

 アシュリンとノワールはこくりとうなずいた。

 きっと、次に会うときにはたくさんの会話を楽しめるだろう、と考えながらワクワクと胸が(おど)った。だって、それは素敵なことだと思うから。

 アシュリンがにまにまと口元を動かしていると、ラルフとルプトゥムが視線を()わしてくすりと笑い声を上げる。

「アシュリンたちのことも話していい?」
「いいよー」
『もちろんです!』

 黙っていた本がいきなりしゃべりだした。

 本はアシュリンとラルフを囲うようにくるくると動き回り、どこか興奮(こうふん)したように声を張り上げる。

『ボーイ・ミーツ・ガール! 青春ですね!』
「なにそれ?」
「少年が少女に出会うこと……だっけ?」
「それじゃあラルフが主人公になっちゃわない?」

 人差し指を口元に添え、ムムムとうなるアシュリンにラルフは本に視線を送る。本はくるくると回り続けていた。

『自分の人生、自分が主人公ですよ!』
「それはそうかもしれないけどー……」

 むぅ、と唇をとがらせるアシュリンをたしなめるように、ノワールが肉球を頬に押し付ける。

「それぞれの人生があるんだにゃー」
「にゃー」

 ぷにぷにの肉球に頬をゆるませるアシュリン。気持ちを持ち直したのか、ノワールの鳴き真似をした。