「そんなに!?」
「うん、ずーっと先まで海でびっくりしたよ」
「わたしも見てみたいなぁ」
「アシュリンの旅の目的地はリーリクルだけど、そのあと見にいけばいいんじゃない? あそこからなら、結構近いし」

 ぴたりと足を止めたラルフが、ごそごそとかばんから地図を取り出して広げて見せる。

 アシュリンとノワールはひょこっとその地図をのぞき込み、赤い丸が付けられている場所に気付いて、「これは?」と問う。

「ぼくが行ったところ。海は最初に見たかったから、空の道でいったよ」
「そのあとは?」
「時と場合……あと気分によって空だったり陸だったり」

 どうらやラルフはとてもマイペースに旅をしていたようだ、とアシュリンは心の中でつぶやき、海の近くを指した。

「この海に行ったのね?」
「うん。海辺の小さな村だったけど、魚介類が新鮮(しんせん)でおいしかったよ」
「街には行かなかったの?」
「……神殿都市の大きさ、知ってる?」

 ふるふると首を横に振るアシュリンに、地図の中心を指し、人差し指の腹で地図を丸くなぞる。

 あまりにも大きな丸に、アシュリンは目を丸くした。

「もしかして、この丸ぜんぶ……」
「神殿都市だよ。だから、小さな村を見てみたかったんだ。本当に小さな村だったけど、村人たちはやさしかったなぁ」
「大きな街に住んでいると、小さな村が珍しい……ってことかな?」
「そんな感じ。アシュリンの故郷も小さな村だっけ?」
「うん。でも、良いところよ。今度案内してあげる!」
「楽しみにしているよ」