「精霊の加護を受けたんだ。すごいね」
「すごい?」

 昨日の出来事(できごと)まで読み進んだのか、ラルフはぱたんと本を閉じてアシュリンに返した。タルコットが水の加護(かご)を自分にしてくれたのが、そんなにすごいことだったのかな? と彼を見つめる。

 彼女の視線を受けて、ラルフが少しだけ空を見上げてから、アシュリンに視線を戻した。

「この世界には、いろんな種族が生きているよね。共存していると言ってもいい」
「きょうぞん?」
「うーんと……、助け合っている、かな?」

 ラルフは言葉を選ぶように目を閉じて、それからすぐに人差し指を口元に添えて言葉を紡ぐ。

「でも、精霊族に会ったのはタルコットがはじめてだよ?」
「お互いに必要なときだけ助け合って、生きているんだよ」

 そうなの? ときょとんとした顔をするアシュリンに、ラルフはこくりと首を動かした。

「人間と他の種族は、生きられる年齢まで違うからね。ぼくたちは百歳まで生きればすごいって言えるけれど、他の種族だと百歳でもまだ子どもって場合もあるよ」
「ええー! 百歳で!?」

 想像できない……とアシュリンがふるふると首を横に振る。

「タルコット……だっけ? 小さくても、アシュリンより年上だった可能性も……」
「ええーっ!」

 アシュリンの人差し指ほどのタルコットの姿を思い出し、思わず大きな声を上げてしまう。精霊の年齢はわからないけれど、もしそうならどうしてタルコットはそう言わなかったのだろう? と考えて、テーブルにゴンッと音を立てて額をつける。