それまで大人しくしていた本が、興奮したようにアシュリンの周りをビュンビュンと舞うのを見て、彼女は肩をすくめる。

「……なんか眠くなっちゃった。今日はもう休もうかなー」
「ずっと歩き通しだったからね。新しいお友だちもできたし、本に魔力を流して休めばいいにゃー」
『今日はたくさん書けそうです!』

 そのことが嬉しいのか、本はテンション高く楽しそうだ。

 アシュリンは滑り台から離れ、きのこのような小屋に近付いてく。屋根がきのこそっくりなのだ。あまりおいしくはなさそうだな、と屋根を眺めながら小屋に入る。

 小屋の中は思ったよりも広く、ベッドとテーブル、椅子があった。

 椅子に座って、テーブルの上をトントンと叩く。本がすかざす机に寝転び、ページをぱらら……とめくって新しいページを開く。

『さぁさぁ、今日の出来事(できごと)を絵本にしましょう!』
「はーい」

 ぺたっとアシュリンが手のひらを押し当て、魔力を注ぐ。魔力が本に吸い込まれ、今日の出来事が本に記されていった。

『明日はどんな物語になるんでしょうねー』
「うーん、楽しいといいな!」
「……アシュリン、本当に楽しんでるにゃぁ」

 眠そうにノワールが欠伸をして、一足先にベッドの枕の近くに丸くなる。アシュリンも眠そうに目元をこすりながら、ベッドにもぐり込む。

「おやすみなさーい……」
『おやすみなさい、良い夢を』
「にゃあー」

 目を閉じると、あっという間に眠りに落ちた。それだけ疲れていたのだろう。