てすりを(つか)んで、スタスタと軽快(けいかい)な音を立てながら階段をのぼっていく。どんどんと遠くなる地面を見て、ほうきに乗って空を飛んでいるときを思い出しアシュリンはすっとゴールを見上げる。

 今、自分はほうきをもっていない。全部リュックの中に入っている。

 もしも足を()み外しても、風の魔法を使えばなんとかなるだろうと自分に言い聞かせて、階段をずんずんと(いきお)いよく進んでいく。

「うわぁー!」
「え、な、なに?」
「にゃにかが転がってくるにゃ!」

 小さいものがトントントンと上から落ちてくるのを、アシュリンは慌てて風魔法を使って受け止めた。

「た、助かりました……」

 階段の上にそっと下ろすと、ぺたんとお尻をついて座り込む。アシュリンよりもとても小さい種族のようで、顔を青ざめさせている。

「大丈夫? あなたはだぁれ?」
「ボクは精霊(せいれい)族のタルコット・ミルズです。もうちょっとで天辺(てっぺん)というところまで行ったのですが、強風で飛ばされてしまいました……」

 しょんぼりと肩を落とし、涙を浮かべるタルコットに、アシュリンはそっと手を差し伸べた。

「わたしはアシュリン・フォーサイス。ねえ、タルコット、わたしが連れていってあげる!」

 アシュリンの提案(ていあん)にタルコットは目を大きく見開き、それからすぐにぱぁっと瞳を輝かせる。

「良いのですかっ?」
「うん、ここで出会ったのもなにかの縁だもん! 一緒に遊ぼう!」
「ありがとうございます、アシュリンさん!」