「これはすごいよ、ラルフ! 背が高くなったみたい!」
「楽しそうでなによりだよ」

 ラルフはアシュリンの手を取らず、代わりにノワールを抱き上げた。

「それじゃ、休憩スペースに急ごうか。眠くなってきちゃった」
「え? う、うん……」
「しっかり我につかまっていろよ、お嬢さん」
「きゃぁぁぁあああっ!」
『あ、待ってくださいよ、みなさーん! もう、私のこと忘れないでくださーい!』

 すごい勢いで走り出したルプトゥムにぎゅっと抱き着いて、なんとか振り払われないようにした。本が叫んでいたけれど、あまりのスピードにアシュリンの意識は落ちないことでいっぱいだったので、いつの間にか本がルプトゥムと同じスピードでついてきたことに気付かず、目を閉じたまま休憩スペースまで向かう。

「どうしてラルフのほうが速いの!?」

 ルプトゥムが休憩スペースにたどりつく前に、ラルフのほうがついていた。

 オオカミのルプトゥムと、人間のラルフなら、彼のほうが遅いはずなのに……と。

「さて、なぜでしょう?」

 なぞなぞみたいに問われて、アシュリンはうーんと考え込む。

「あっ、もしかして、……わ、わたしが重かったから……?」

 しゅんと肩を落とすアシュリンに、ルプトゥムがいきなり大きな声で笑った。

「軽かったぞ、お嬢さん。もっともっと、シンプルな答えだよ」